《MUMEI》
命日
(よく、許してくれたよな…)


俺の病室の冷蔵庫には、大さんが用意した栄養補助飲料と、俺が毎日飲んでいるゼリー飲料が入っている。

それらを、明日一日かけて、全て飲む事


それだけを条件に、大さんは俺のわがままを聞いてくれたのだ。


幸い、この個室には、洗面所もトイレもある。


俺が意識を失っている間に、楓さんが体を拭いてくれたらしいから、体臭も気にならなかった。


俺は、目覚まし時計を


深夜0時にセットした。


実際は、目覚ましの五分前には俺は目が覚めていた。

その五分は、とてつもなく長い五分間だった。


(早く、早く、早く…)


時計を見つめながら、それだけを願った。


そして、時刻は


九月三十日の0時になった。


也祐が、自ら命を絶ったこの日だけ


俺は、也祐を


也祐と過ごした日々を思い出す事を


忍と


死んだ也祐から許されていた。


何故なら、命日に故人を思い出し、その思い出に浸る事は


普通


だからだ。


俺は、ゆっくりと、過去の記憶を遡る。


俺が、也祐と会った時は、さすがに覚えていないから、物心ついた頃からの日々を…

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