《MUMEI》
お袋
「もしも―し!由自?母さんですよ―??」

「なっ……なんでお袋が俊の電話から!?」

「さっき駅でバッタリ会ってね〜。ほら、母さん携帯持ってないでしょ?携帯の番号も長いから覚えるの面倒臭くてこっち来て困ってたからちょうどよかったわ!今からそっち向かうから待ってなさい!」

ブチッ



一方的に電話を切られて、ツーツーと機械的な音がただ響いた。

子供の携帯の番号も覚えてないってどういう母親だ。


覚えるのが面倒臭いって何だ。

嫌なら携帯を持ちやがれ!




――ちっ!俊からかと思ってドキドキしちゃったじゃん。

オレのドキドキを返せ!!








―――――――――

「由自、勉強本当に頑張ってるのね」

「……この様子を見てわかんねぇのかよ」

「電話してから行ったら偽装工作されるかと思ったんだけど、俊くんが毎日きちんとやってますよ、って言うから……。あんた俊くんに勉強見てもらってるんでしょ。感謝しないとね」

「俊――…他に何か言ってた?」

「他に?そうねぇ……。ああオレが由自を大学に入れて見せますよ。頑張るのは由自ですけどね……って。それから、由自にはオレがついてますからとか言ってたわ。すごく頼もしいのね。こっちに来てからさらにしっかりしたみたい。それに……とても男前になって……。きっと、女の子達もほっとかないはずよね」

「当たり前だろ。あいつは昔から女には苦労しないヤツだったじゃねぇか」

「そうだけどそろそろ興味持ってもいい頃よ?あんたの知らない所でいろいろあるのよ」








……オレの知らない所でいろいろあるだと?

あってたまるか!




――あ、でもこの一ヶ月間、オレ、俊とは一言も……。

もしお袋の言うことが本当で、女と付き合ってるんだとしたらヌく必要は……。








「……お袋、今日はどこに泊まるんだよ」

「こんな汚くて狭い部屋に誰が泊まるのよ?ホテルをちゃんと用意してあるから」

「いつあっち戻んの?親父とかほっといていいのかよ」

「バカねぇ!明日戻るに決まってんでしょ!!」

「聞くまででもなかったか……」







明日帰ってくれるならありがたい。

オレには今すぐにでもやらなければならないことがある。


「今日は久しぶりに料理食べさせてよ」

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