《MUMEI》 しまった気持ち〜栄実視点〜 「栄実!!」 海が私の言葉をかき消すかのように、私の名前を呼ぶ。 「何!?」 頬をつたう冷たい水を拭おうともせず、私は海に冷たい視線を送る。 「もう放っておいてよ!!」 これ以上私に優しくなんてしないで・・・。 「目の前に泣いている友達が居るのに放っておける訳ないだろ?」 拒絶の言葉を吐いたすぐ後なのに 歩っちは私の目をまっすぐに見つめながら、しっかりとした口調で言い切る。 「だから友達なんかじゃ「栄実にとって俺は友達じゃなくても 俺にとって栄実は大切な友達だ!! それは栄実が何て言おうと変わらない!!」 友達なんかじゃない。 私が発しようとした否定の言葉を遮って、歩っちは真剣に想いを伝える。 私さっき、友達だなんて思ったことないって言ったばっかりなんだよ? それなのにまだ私のこと心配してくれるの? 友達だって言ってくれるの・・・?? 頬をつたう涙は、先程と変わらず冷たくて・・・ でも微かに胸の奥に感じた暖かさが、しまったはずの気持ちを呼び覚ます。 込み上げてくる気持ち、願い・・・ やめて・・・出て来ないで!! 消そうとすればするほど気持ちは、込み上げてくる一方で 隠そうとすればするほど願いは、強くなる一方だった。 前へ |次へ |
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