《MUMEI》

「どうしたんだ?」


翔太が残っていた1年生に尋ねる。


「いや…、自分たちもよくわかんないす。」


「なんだそれ。


何か言ってなかったの?」


「猪狩がなんとかって言ってましたけど、よくわかんないす。」


「猪狩だと!?」


「え?たぶんそう言ってたと思いますけど…?


なぁ?」


「はい。猪狩がなんとかって…」


「何で早く言わねえんだ!!」


翔太も体育館を飛び出す。


(猪狩…


あいつまだ…)





(どこだ!?)


校内を必死に探し回るハンド部。


男子トイレ、学校裏、屋上。


とにかく探したが、見つからない。


「…思い過ごしだったんじゃない?」


ユキヒロと一緒に探していた日高が言う。


「…だったらいいけどな。


でも実際俺のとこに来た1年はアザがあったんだ!!


いそうなとこは全部探さなきゃダメだ!!」


「…わかった!!」





「いないね…」


「次だ!!」


椎名と千秋が探す。


「あれ?2人とも練習は?」


「佑香、何してんだよ?」


「あたし?あたし今日体育委員の仕事あるから遅くなるって言ったじゃん。」


「じゃあ早く練習行けよ。」


「?


まだ仕事終わってないし。


てか何してんの?


今日校舎でトレーニングだっけ?」


「ちげ〜よ!!


いいからお前はさっさと仕事しろ!!」


「いや、それがさぁ〜、


外倉庫の鍵がないんだよね〜。


先生たちは職員会議してるからマスターキーも貸してもらえないし。」


「…外倉庫?


…千秋!!」


「うん!!」


「俺はマスターキー取ってくる!!


千秋は先輩たち呼んで!!」


「オッケー!!」


「職員室の鍵は勝手に使っちゃダメなんだよ!!」


「非常事態ならいいんだよ!!」


「え!?そうなの!?」


「そう!!今俺が決めた!!」


「ちょっと椎名くん!!」

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