《MUMEI》
3#霧の屋敷A
屋敷に近づくと、お屋敷主様の豪快な笑い声が聞こえてきた。
そばでクスクスと笑いながらお屋敷主様にまとわりつくベッコウの姿も見える。

「お〜帰ってきよったぞ」
お屋敷主様が草馬達を見つけると大きく手を振り手招きをする。
「お屋敷主様、近くで戦の模様です」
草馬がかしこまり片膝をついて報告する
「そうかそうか。忙しくなるじゃろうなぁ〜」
お屋敷主様はベッコウの頭をなでながら、うんうんと頷く。

1500年余りの動乱を生き続けていると聞く屋敷の主とは思えない優しい眼差しで一同を見渡すとニッコリと微笑む。
その姿は、孫を想う老人のそれと同じの様に見えた。
「ジジ様ぁ〜〜ベッコウねぇ〜新しい着物が欲しいんだぁ〜」
そして、孫?の様に甘えるベッコウ。
「ベッコウさん、お屋敷主様にジジ様だなんて失礼ですよ。」
「えぇ〜〜でもぉ〜ぼくぅ〜着物欲しいんだぁ〜ねぇジジ様ぁ」
生真面目なアオメの注意もベッコウに届く様子も無く主にまとわりつき甘え続ける。
当のお屋敷主様はフォッフォッフォッと愉快そうに笑い声を漏らし楽しんでいる。
「ええじゃないか〜。アオもアカもこっちへ来い」
そう言って大きく手を広げると近づいてきた2人も丸ごと抱きしめてしまった。
きゃぁ〜・ヒャッ・ギャァ
3人の悲鳴もなんのその、老人は大らかに笑いながらムギュ!ムギュ!と何度も何度も抱きしめていた。
部屋の隅から見守る草馬は半ば呆れ顔だ。

しばし、老人と孫達のじゃれあいを眺めていると障子越しに声が聞こえた。
「失礼致します。ベッコウ様、客人でございます。」

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