《MUMEI》 邪魔者展望台に入ると、ふと思い出した。 (あれ?あいつらが居ない… 何台かすれ違った中にいたのか?) ゆっくりと回り、再びコースに飛び出した。 下りではマシンパワーより、テクニックが必要になる。 まれに、400ccが、たかが80ccのNSRに負ける事もある。 それが峠の楽しい所だ。 (この下りでちぎってやる!) 俺は、自分のリミッターが効くまで、全開で攻め込んだ。 路面と擦れ合う膝を時折たたみながら、ギリギリのバランスでコーナーを駆け抜けて行く。 俺達のデッドヒートに、道端のギャラリー達は一歩下がる。 中盤辺りになると、後ろから感じていたプレッシャーが徐々に消えていく。 (ちぎれたか? いや、油断は出来ない。後半の高速ステージで追い付いて来るに違いない。) 俺は、ペースを落とさずに走り続けた。 後半の、最初のストレートでアクセルを開けようと思った瞬間、前方から来るバイクに目が止まった。 白いバイクに青い服を着たお揃いの集団だ。 (ヤバい! 白〇イだ!!) 俺はスピードを落としたまま、その4台とすれ違った。 奴らはサングラス越しに、明らかに睨みつけている。 (国家権力を良いことに威張りやがって !!) そう思った俺は、自然に奴らを睨み返していた。 ミラーを覗くと、一番後ろの白〇イのブレーキランプが光った。 それと同時にGSXーRが後ろに来た。 俺は、制限速度をキープしたまま峠を下り、いつもの自販機に向かった。 自販機の少し手前で、最後尾の奴が、サイレンと赤色灯を点けて俺の前にかぶせてきた。 「左に寄って止まれ」というジェスチャーをしているが、それを無視して俺は自販機にたどり着いた。 俺に続き、GSXーRも自販機の広場に止まった。 俺の前を走っていた白〇イは、不意をつかれ、Uターンして入って来た。 前へ |次へ |
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