《MUMEI》
合コン
「な〜頼むよ行こう?」
「無理だよ、だいたい俺が行く訳ねーじゃん…俺には貢がいるんだし…」
「だから頼んでるんだってば〜、佐伯〜、助けてくれって〜」
―――日高には二つ上の兄貴がいる。
その兄貴主催で今日合コンがあるらしい…。
なんでも予定していた兄貴のダチがいきなりはしかにかかって、急遽弟の日高にお鉢が回ってきたというか…。
「だから〜、俺を立てて女の子を俺にくっつけて欲しいんだよ、佐伯の会費は勿論俺が出す!な〜サクラやってくれ!頼むよ〜」
「でもなあ〜、サクラかよ…」
「佐伯誘わないと他の奴誘わなきゃなんねーんだもん、そしたら女の子の競争率上がるじゃん?な〜行こうってば〜」
上目使いでお願いする日高。
つか目が細くてキモイだけ。
俺は二本目のうまい棒に手をだす。
「う〜ん」
「な〜、俺も恋人欲しいんだよ〜」
「行ってやれば」
「あ、貢」
気がつけば俺の後ろに貢が立っていた。
つか日高が勝手に貢の椅子に座っているだけ。
そう。最近マジで席がえして貢は俺の後ろの席になった。
そして日高は遥か彼方に離されて…、
席順は担任が独自に決めたという事になっているが、本当は全て貢が仕切った事実は俺しか知らない。
「日高に女いた方がこっちも安心だしな、
な?協力してあげな?」
「お〜!話分かる男だな長沢は〜!」
そう言いながら日高は立ち上がり貢に席を返した。
「…心配じゃないの?」
「なんで?だって聖は俺以外興味ないでしょ?つか他の奴見て来つつ俺の良さを再確認して貰う絶好の機会?」
貢はそう言い、にっこり爽やかに微笑みながら俺の手をさりげなーく握ってきた。
ペチッ!
「……」
「ププッ…、長沢かっこわるっ!」
「…う〜ん、今回だけだぞ?」
「有り難う!佐伯〜、愛してるよ〜」
バキッ!
「調子に乗るな腐れゲス男!――そのかわり聖ちゃんになんかあったら次は殺すからな…」
貢の鋭い眼光に日高はかなりのびびり顔で必死に頷いた。
つか今、貢が日高の頭叩いた音、スッゲーいい音だった。
絶対八つ当たり入ってたな、今の…
俺は欠伸一つして窓の景色を見る。
ちょっと前までは合コン行きたくてたまんなかったのになあ…
すっかり興味ないや…。
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