《MUMEI》 「え〜、なんで〜!?」 他の女子が不満そうな顔をする。 「―…だって、かなめは一途だもん。 西城先輩を大好きなかなめが、椎名君と付き合うわけないよ」 そう言って、「ね?」とおれに同意を求める青木。 おれは、慌てて何度も頷いた。 「…それもそっかあ」 「かなめ、先輩見ると目がハートになってたもんねえ」 「…椎名君のこと、ちょっと恐がってたしね」 「あ〜、椎名くんて若干、不良っぽいしね」 「わかる〜!!」 …言いたい放題だな、おい。 納得したような女子達は、 きゃいきゃい言いながらトイレへと連れ立っていった。 …一途、か。 そうなんだろう。 蓬田は、一途で、真直ぐで―… …『西城先輩』に、恋をしてる。 隣の青木を、横目で見る。 親友の青木は、蓬田のことをよく分かってる。 ―…少なくとも、おれなんかよりはずっと。 青木がおれの視線に気付き、微笑みを向ける。 「…リッコたち、ウワサ真に受けすぎだよね。 ―…かなめが好きなのは西城先輩なのに、ねえ??」 苦笑しながら言う青木に、頷きを返す。 青木の言葉が、 やけに重くのしかかる。 …そうだよな。 蓬田は、 『西城先輩』を、好きなんだよな。 頷きながら、胸が苦しくなるのを感じた。 前へ |次へ |
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