《MUMEI》
体育、 〈おれ〉
「ちょっと用事ある」



青木にそう言って、おれは保健室に向かう。


…次体育だから、保健室で着替えることにした。



「あら、今日は1人??」



そう微笑んで、香織センセーが出迎えてくれた。



「お邪魔します」



保健室に入る。


おれがカーテンの裏で着替えていると、



「…調子はどう??」



香織センセーが尋ねてきた。



「調子って…??」


「あなたの調子よ。体に異変がーって、言ってたじゃない」


「………」



着替え終わったおれは、香織センセーの正面に座った。



「…良くなるどころか、酷くなってます」



おれがそう告げると、



「…そう」



と、香織センセーは呟いた。



「なんか、イライラしやすくなったってゆーか…」



…どーすれば治るんだ。



「…もうすぐよ」



センセーが、微笑んだ。



「へ…??」


「もうすぐ、分かるわ。
何かの拍子にふっと気付くの。―…その原因に、ね」


「………」



そういうもんなのか…??


考え込んでいると、チャイムが鳴った。



「つぎ、体育なんでしょう??早く行きなさい」



センセーに急かされて、席を立つ。


保健室を出る間際、



「がんばってね」



と、センセーが笑って言った。



「…はい」



そう答えて、体育館へ向かう。


「がんばってね」と言ったときの、
香織センセーの謎めいた笑みが、少し引っかかった。

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