《MUMEI》 「こちらへどうぞ。」 アイマスクのまま放られ、鍵を掛けられた。 何処だ此処は……?! 「あれ、子供?!」 声が聞こえて転んだ僕を抱き起こしてくれた。 「その首輪……あいつのか……可哀相に。」 声の主は抱きしめてくれる。 擦り寄せられた頬にはガーゼのようなものが付いていて湿布臭い。 「お嬢ちゃん、名前は?」 頭を撫でて聞いてくれた。 お嬢ちゃんに間違えられた。 何も答えられないから首を振る。 「そうか、君、話せないのか。」 僕は頷く。 「本当は俺が考えていたんだけど、君は幼過ぎるからこれをあげるよ。 いいかい、千石に会ったら渡すんだよ?」 その人から渡された物は甘い香りがした焼き菓子のようだ。 前へ |次へ |
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