《MUMEI》
答えは1つ
   〜栄実視点〜


私を抱きしめている海の腕に力が入る。


「過去を知らなかったら栄実の心配しちゃいけないの・・・?」


歩っちは悲しそうな表情を浮かべて質問してくる。


私は、涙を流しながら歩っちを見つめる。


「そりゃ、会ったばっかりだから知らないことだって沢山あるよ・・・


でもこれからも一緒に居たいと思ってるし

笑って欲しいって思ってる。


栄実が笑顔になるために俺が出来ることがあるなら、したいって思ってる。」


歩っちは、私と向き合おうと真剣に語りかける。


歩っちの言葉は、私の胸に染み渡る。


暖かい言葉のはずなのに・・・・・微かに胸が痛む。


その言葉は、傷口にしみていく。


私には、海に抱きしめてもらう資格も


歩っちに信じてもらう資格も


麗羅の側にいる資格もない・・・・・。


誰かに優しくしてもらう資格もない。




私が幸せになる資格なんてないの・・・・・。


黙り込んだ私に、歩っちは言葉を紡ぐ。


「過去に何があったかは分からないし、過去を変えることは出来ないけど・・・・・




一緒に前に進むことは出来るよ」


一緒に・・・・・前に進む?


傷付けた陽奈子を置いて、私だけ前に進むの??


「・・・・・・・・。


栄実には、みんなに想われる資格なんてない」


絞り出すようにして出した声に、歩っちは少し怒ったように言葉を発する。


「資格とか・・・・・


そんなものいるの?


みんな栄実が大切だから、栄実の力になりたいって思ってるんだ。


資格とかそんなん関係ない!」


何も言わない私に、歩っちは真剣な眼差しで質問してくる。


「栄実は俺達と一緒に居たくないのか??


今、知りたいのはそれだけだよ」


そんなの答えは1つに決まってる。


でも言えるわけない・・・。

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