《MUMEI》
「本当にドジっただけなら全然黙ってる理由ねーじゃん?
なんかお前ら今日おかしすぎ」
「―――」
「普通付き合ってたらなんでも言っちゃうもんじゃね?
って俺も秀幸と付き合ってからそうなったんだけど…」
エレベーターがピタリと止まり俺達は出る。
「…確かにお前は変わったよ、スッゲー変わった、マジで」
「良い意味で言ってくれてんだよね?
そりゃどうも」
キーを差し込みカチャリと音がして…
「な、裕斗…」
「は?」
「俺達って不自然か?」
「―――さあ、
人各々だろ?誰が見たってバカみたいな行為が自然な人もいるし」
部屋に促され入ると裕斗はクローゼットからTシャツを出した。
「とりあえず着替えろ」
「あ、うん、ありがと」
裕斗はベッドに眠る惇を見下しだした。
「惇の寝顔って無邪気だよな、なんつうか癒し系?
嫌な想いいっぱいしてきてんのによ…、
なんか切ねえ」
「……うん」
俺も惇の傍に行き、そこにしゃがみ込む。
「――聞いてるか?
上京してきた…理由とか…」
「―――――
なんだよ、裕斗にはもう話てたんかよ…」
「は、―――――
当たり前じゃん…
恋人より親友の方が偉いんだぜ?」
酷く冷えた缶ビールを背後から頬につけられ、黙ったまま俺は受け取る。
「――――
惇な…、」
背後からプシュリとタブを持ち上げる音がして
「――――」
「俺にキスしてきた」
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