《MUMEI》
兄弟の秘密。
『到着!!』


自慢気な渉。


『……。』


着いたのは、学校から二駅も離れた所にある古びた商店街だった…。


『あのさ〜渉。
夕食の買い出しの為だけに普通、電車乗り継ぎまでするかな…。』


『しょうがねぇじゃん。
ここなら絶対、知り合いに会わないだろ?』


『まぁ…そうだけど。』


私は飽きれつつも、どうして大金持ちの渉が、こんな商店街を知ってるのか、気になった…。


すると、商店街をブラブラ歩きながら渉が言った。


『…ここさ〜昔、俺が、住んでた家の近くなんだ。
すげぇ懐かしい…。
前は1人でよく来てたけど最近来てなかったな…。』


“……えっ?”
渉が、こんな下町に住んでたなんて意外だった…。


『…昔って?』


『あ〜小学生まで。
ここの近くのアパートで、母親と俺の…2人暮らしだったんだ…。』


『………!?』


『ははっ!
何黙ってんだよ(笑)!?
そんなに驚くことか?
…うち再婚同士なんだよ。俺は、母親の連れ子。』


『…え〜!…うそ!?
………(知らなかった)
じゃ〜稜兄とは……。』


『あぁ〜俺ら…
血繋がってないよ…。
稜兄は父親の方の、連れ子だから…。』


“そうだったんだ〜。
それでこの2人…何だか、ギクシャクした感じなのかな…。…でも。”


『でも、2人を見てると顔とか、何となく似てる気がするけどな…。』


『…そりゃ〜
何年も兄弟やってりゃ…血なんて繋がってなくても似てくるんだよ…。
俺も今は、稜兄の事を本当の兄貴だと思ってるし。』


『…そっか。』


今まで渉は、大金持ちの家で何不自由ない生活をしてたと思ってたのに違うんだ…。


すれ違う人たちは、老人ばかりの古びた商店街で、制服姿の私たちは、随分目立っていただろう…。


でも、そんなことはお構い無しで歩き続けた…。
ずっと、渉の思い出話を聞きながら…。


気が付くと、商店街のシャッターが下りはじめた。


『やっべー!
もうこんな時間だ!!
早く帰らねぇと、きっと稜兄怒ってるぞ。』


“そうだ…。”私たちは慌てて家に帰った…。


案の定…お腹を空かせた稜兄はカンカンだった…。


家に着いてから永遠、一時間も説教されてしまった。


けど…私たちは最後まで“どこに行ってたのか?”という質問にだけは答えなかった。


『あぁ〜(怒)!!
……もういい。
…とりあえず飯!!』


ようやく諦めた稜兄の姿を見て、ホッとした…。


私と渉は、お互い目が合うなり、クスっと笑う。


そんな私たちを見て、また稜兄が怒りだす。


『お前ら〜!!
やっぱり何か隠しるだろ〜!?言え〜(怒)!!』

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