《MUMEI》

「俺はアルの親に似てるのかな?」

暴れるアルを俺は是清の手から受け取る。
ピタッと大人しくなる。

「そんな毛むくじゃらではないだろ。」

真面目に言われた。

「匂いとかだよ。」

「……うーん?情欲を掻き毟られるとしか……」

俺の耳の裏に鼻を擦り付けて嗅いできた。


「是清は……石鹸の匂い。実は綺麗好きで、風呂も本当は毎日入りたい?」



「お見事……エスパー?」

是清はかなり驚いている。俺に言わせてみればデスクの配置から一つ一つの動作を見ていれば分かる。
洞察力と言って欲しい。


「この俺が、その腐った生活、なんとかしてやろうか?」

耳元でそっと囁いた。


「……ぅへぁ、して欲しいっす……」

壁際に寄り掛かってずり落ちた。
俺が大分好きなようだ。


「職場の斡旋宜しくな?
根回しとしてカラダで賄賂先払いしとくから。」

お姫様にもしてやらないくらい手を差し延べてやる。

「ウチの社員、乙矢のテキパキ動く姿見てずっと目ぇ付けてるから心配するな。

どんな企業が欲しがっても乙矢はウチで飼い殺す。」

飼い殺す……ねぇ?
いつになく強気な社長はおかしかった。

「言っとくけど、俺は高いからな?」

それなりの覚悟がなきゃな。

「どうぞー、煮るなり焼くなり?
知ってるか、今日の俺はクリスマスなんだ。」

首に手を掛けてキスを誘う。

「……ナニソレ。」

「続きはベッドで!」

目が徹夜明けての危ないテンションだった。

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