《MUMEI》
春日 也祐
也祐は、俺にとっては世界で一番優しく愛しい男だが、その外見は…


普通、だ。


俺が、普通を目指すようになってから出会った人達の中で、也祐に近い外見をしているのは


同級生の守や、文化祭で会った相田先生のいとこの貴志さんだ。


つまり、也祐は平凡な顔をしていた。


俺がそんな也祐の非凡な中身を知るのは、也祐の死後にだった。


平安時代まで家系図がある貴族の末裔で


大学を飛び級で十五歳で卒業するほどの頭脳と、平均以上の高い身体能力を持つ

有名企業を束ねる、春日グループの、完全実力主義の社長


それが、俺の知らない


忍や、他の人間が尊敬してやまない


春日 也祐のもう一つの顔だった。


俺は也祐にとって


人生最大の汚点だから


也祐の輝かしい経歴を傷つけるから


だから、こんな所で


たった一人で也祐の命日を過ごさなければならなかった。


俺が也祐と過ごした、春日家の広大な庭の一部につくられた離れは、もうないのだ。


その離れは、普通の家族が生活できそうな位広かった。

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