《MUMEI》
新シイ家族
「有理」

「何?」

「いいよ。詞、急がなくて」

「いや、でも仕事と家庭は別だから」

「ううん。有理いいから早苗さんの側にいてあげて」

「でも」

「春日有希の仕事は歌だけじゃないからさ。喉の調子が悪いとか言っておく」

「……ありがとう。ゴメンな、流理」

「もっと迷惑かけてくれてもいいよ。隠し続けるのを止めて、世間に公表する時は言ってくれな」

そう言い残してオレは有理の部屋を出た。

有理のことだから、我慢できなくて言うに違いない。

それでもオレは全然構わない。逆にオレもすっきりするし。

「流理!!」

「ん?」

有理がドアから顔を覗かせた。

「本当にそうなったら……その時は頼む」


***


『私の相手ですが、谷口有理と言う男性です。彼は春日有希くんの弟です。つまり、前の春日有希です』

この発言はものすごい嵐を呼んだ。

当たり前だ。

有理とできてるってことは、全盛期の春日有希とできてたってことだから。

「春日く――んっ!」

「コメントをっ」

「野中早苗さんと弟さんの関係についてどう思ってますか!?」

「どうって……別にいいんじゃないですか?恋愛は自由ですし……。ただ妊娠はびっくりしましたけど」

「おふたりは結婚するんでしょうか!?」

「いくら双子だからってそこまで通じあってませんよ。僕にはわかりません」

「もしそうなった時、春日くんは祝福できますか?」

「?」

「弟さんはほら、車椅子の生活でしょう?野中さんに弟さんをまかせられるのかと言う意味です」

「まかせるとかそんな表現は適切ではないと思います。有理はひとりの人間です。そんな小さな子供やペットみたいな言い方はやめてもらえませんか?」

「す、すみません」

つい強い言い方になってしまった。

「あっご…ゴメンなさい!強い言い方してしまって」

「いえ……」

あちゃ〜…有理のことになるとムキになっちゃうんだよな…。

「弟さんのことになると急に人がお変わりになって……」

「すみません…」

「それって有理くんがたったひとりの家族であってたったひとりのご兄弟だからですよね?」

「そうです」

「じゃあ今回、血の繋がった家族ができることはすごく楽しみですね」

「ハイ……」

なんか見透かされていて恥ずかしい。

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