《MUMEI》

此処は死の境だ。
鮮やかでもなく
白くもなく
黒くもなく

暗くもなく
眩しくもなく

心地よいばかりだ。



黒い男は見送っていた。

「……お別れは済んだのですね。」



あきこの体は光の粒になり、きらきらと飛んでゆく。

「はい、私は愛されていた……。それに感謝出来た……。」

愛されること、あきこは自分を自覚することで猫の天寿を全うするよりも深い幸福を手に入れた。

「鈴、戴いて宜しいですか?」

「ええ、私にはもう必要のないものだから……」

あきこはそう言ってきらきらと舞い散った。


最後に、
彼女の鈴だけが残った。

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