《MUMEI》

「……深黒は意地悪さんだよね。」

黒い男と黒い猫は雑踏に紛れる。



「傍観趣味の摩愁に言われたくないわ。」



「……だって知りたいじゃないか。人と猫の違いの有無を……。」

路地裏にはあの、軋る扉。

彼等は闇の中に溶け込む。




「さあ、僕の番だ。」

又旅の間には黒い女、
そして黒い雄猫。


「早く、行きなさい」

黒い女は蝋燭に火を点けた。


「相変わらずだな、深黒は。それじゃあ、行ってきます。」









黒い猫は今日も

扉を導く


昏い 昏い

又旅の間の道を。



     終

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