《MUMEI》

坂城家でバイトを始めてから、数週間が経った…。


相変わらず稜兄は変態で、下着コレクションは増える一方だったけど、バイト中は学校の事を忘れられた。


いつの間にか…
坂城家に行くのが楽しみになっていたんだ。


“今はまだ、みんなにシカトされてて辛いけど…そのうち時間が経てば、噂話も消えてくれるだろう…。”


そう思っていた。


『暑っち〜!!
璃久!!水持ってきて。』


『は〜い。
(稜兄め!人使い荒いんだから〜!!)』


『なぁ…?璃久。
この家、暑すぎねぇ?』


“たしかに…。”
真夏とはいえ、冷房をつけて、この暑さ…おかしい。


私も、稜兄の大量の洗濯物と格闘した結果、汗だくになっていた…。
洗濯物を乾そうと窓を開けると、外の方が涼しい…。


『ねぇ?稜兄…。
クーラー壊れてない?』


『…だな。』


修理屋さんを呼んでも、坂城家のクーラーは外国製で修理不可能だと言われてしまった…。


『…どうすんだよ?
これ(怒)!これじゃ熱中症になっちまうぞ…。』


『分かってるよ…。』


“何で私が責められなきゃいけないの…?
それに、私はこの中で働いてるんだからね!
稜兄より数百倍、暑いっつ〜の(怒)!!”


『…とりあえず、もうすぐ図書館行ってる渉が帰ってくっから、あいつになんとかしてもらえよ…。』


稜兄は不機嫌そう。


私も暑くてイライラしていたのだろう…。
稜兄に返事もせず、黙って働き続けた。


渉は、なかなか帰ってこない…。
稜兄に腹を立てていたから、嫌味のように部屋中掃除機をかけてやった。



“…暑い…暑い…暑い。”
頭が痛い。
ポタポタと汗が滴り落ちていた…。



“…暑い……暑い…”


意識が朦朧としてきた…。


“…暑い……”


バタンッ!!


気が付くと私は、ソファーに寝転がっていた…。
頭と首元には冷たいタオルが巻かれていて、稜兄が不貞腐れながら、うちわで私を扇いでくれている…。


『…私……?』


『…気が付いたか?
ったくお前倒れたんだ!
今、医者も帰った…。
本当に熱中症になるバカ、初めて見たよ…。』


『(倒れた?私が…?)
…うそ!?ゴメン!!
迷惑掛けて…。』



ソファーから起き上がろうとした私は、信じられない状態だった…。


思わず、かけてあったタオルケットを頭から被る!!


“…どういうこと?”


混乱している頭の中を整理して、もう一度自分の姿を確認する。


“…………。”


何かの間違いではないかと、もう一度確認!!


“…………。”


“間違いじゃない!!”


“…私。……私…”


“何で全裸…!?”


そう。気を失った私が目覚めた時、ソファーに全裸でタオルケットという、信じられない姿だった…。

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