《MUMEI》
久しぶり
二年後。


俺、九歳


忍、二十四歳


そして、俺を二十五の時に買った也祐は、三十四歳になっていた。


カシャーンッ


『…え?』


俺は、也祐の思いがけない一言に、持っていたフォークを皿に落としてしまった。


『行儀が悪いぞ』

『いいよ、忍』

『…』


也祐の言葉に、忍は無言で頭を下げた。


今は、夕食の時間で、俺と也祐が二人だけで食事をし、忍は也祐の斜め後ろに立っていた。


『本当に?』


俺が、恐る恐る確認すると、也祐はいつもの優しい笑顔を俺に向けた。


(良かった!)


俺は、也祐に嫌われていない事がわかり、心から安心した。


夕食も、いつもより早く食べ終わり、いつものように

着替えを持って風呂場に向かおうとした俺に、忍が不思議な一言を言った。


『必要無い』


そして、首を傾げる俺から有無も言わさず着替えを取り上げた。


『早く行け。旦那様がお待ちだ』

『う、うん』


久しぶりに風呂に入ろうと言った也祐の気が変わっては困ると思った俺は、慌てて風呂場に向かった。


そこには既に、也祐が待っていた。

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