《MUMEI》

焼き菓子はナイフやフォークによって背中で解体されてく。

背骨にかちかちぶつかる切っ先が怖い。

時折、引き攣れた僕の頭を氷室様は足蹴にして静止させた。



「テーブル、五月蝿い。」

氷室様により首が床に沈められた。



「ああ……零れた。
いけない、カーペットが汚れたじゃないか。
そういうときはどうしてくれるかな?」

僕の背中から焼き菓子が落ちていたのが分かる。
お父様はそのことを言っているのだろう。


「……さあ?」

氷室様はいつもより軽い疑問形を使う。
いつもなら落ちたものは僕が食べるところだ。


「このテーブルが食べるんだろうね。」

お父様は僕の口にフォークで零れた菓子を詰め込んでくれる。

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