《MUMEI》

25-8で、ゲームセット。


力を抑えたつもりでも、
ついスパイクとかを打ってしまい、相手チームにボロ勝ちしてしまった。



相手チームはもちろんのこと、味方チームも相当驚いていた。



「かなめ…すごすぎ」


「バレー部入んない!?」


「かなめ、かっこいい〜!!!」



口々に言ってくる女子達。



「いや、えっと…」



言葉を濁していると、
男子がバスケをしてる方向から、どよめきが起きた。



「あ、椎名君…」



青木が呟く。


振り返ると、『おれ』の姿をした蓬田が、
6組の小木に吹っ飛ばされているところだった。



―…おい、蓬田は女だぞ!!!

思わず走り寄ろうとするが、すんでのところで押し止めた。


…今、おれが行ってどうなる??



「小木、絶対ファウルだよ!!」


「椎名くんが小木なんかに負けるわけないじゃん、ねえ??」


「ムカつく〜!!」



文句を言い合う女子達。



おれは、蓬田から目を離せずにいた。



おれに気付いた蓬田が、微笑みを向ける。



今のはやっぱり小木のファウルだったらしく、蓬田にフリースローが与えられた。



おれは、蓬田に



『がんばれ』



と、口の形だけで言った。



蓬田は、力強く頷いた。

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