《MUMEI》 妄想「だから、蝶子が入るネタは全て却下!」 「はあぁ!?」 その日は、商店街のメンバーが休みを揃えて久しぶりに『クローバー』に集合していた。 昼間、貸し切りにするのは珍しい事だったが、皆小さい子供が多いから、というのが理由だった。 「何言ってんだ? 俊彦。蝶子ちゃんダメなら、ほとんどネタ全滅だぞ」 「だって、だって!」 俊彦は、妄想を語り出した。 「蝶子は皆の為に力になってくれるいい子だ。その上美脚で可愛い子だ、最高だ。 そんな蝶子を普通の女子高生ができるわけない! そうすると、蝶子に出演依頼が…」 「「来ないから!」」 今も息ぴったりな祐介さんと勇さんがツッコミを入れた。 「で、でも。オリジナルの台本読んで、蝶子を好きになっちゃう高校生がいるかもしれないし!」 「そんな事あるわけないでしょ!」 私は否定したが… 「「あるかも…」」 今も仲良しな瞳さんと薫子さんが声を揃えると、 「蝶子ちゃん、まだ二十代だからね」 俊彦と同じ三十歳の春樹さんが頷いた。 「ほら、ほらあ!」 俊彦の妄想は更に拡大したらしく、私は困り果てた。 前へ |次へ |
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