《MUMEI》 海外出張『アメリカ?どこだ?それ』 『ここだよ』 也祐は世界地図を広げて見せた。 『この屋敷があるのは?』 俺は、十歳になっても、自分の住んでいる国が日本だとは知らなかった。 『ここだよ』 『嫌だ! 俺も行く!』 俺は、その距離の遠さに驚き、也祐に抱きついた。 十歳の俺は、也祐の胸のあたりに顔を埋めるほどの身長になっていた。 『私も嫌だよ。でも、今回は仕方ないんだ。 お土産、いっぱい買ってくるから、ね』 『嫌だ! 也祐は俺と愛し合えなくて辛くないのか!?』 俺と也祐は、可能な限り、ほぼ毎日愛し合う日々が続いていた。 『…そんなわけないだろう』 也祐は俺の口を塞ぐように、長いキスをした。 俺達の関係を知っている忍は、ただその様子を見ていた。 『帰ってきたら、一番に祐也を抱くよ。…愛し合う為に』 『本当か!?』 『祐也は私が信じられないのかい?』 『そんな事無い!』 悲しげな顔をする也祐に向かって俺は叫んだ。 それから三日後。 『旦那様。お時間です』 『…あぁ。行ってくるよ、祐也』 『行ってらっしゃい』 俺は也祐と、ついでに忍を見送った。 前へ |次へ |
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