《MUMEI》

何かを求めるかの様に伸ばされた手、触れる寸前
ピタリとその脚を止め、その場へと蹲った
「……痛、い。嫌、指が痛いよ。止めて、止めて!」
突然に喚きだし、その直後
くるみの中指が、濡れた水音を立てながら千切れて
そこから溢れ出す血液
その中から何か白い影の様なモノが現れた
見えるそれは狐のような姿・形をしていて
くるみを白く覆い始める
「……嫌ぁ!入ってこないで!私を、私を奪わないで!」
喚く事を始めたくるみに、李桂は咄嗟に法衣の袂から札を一枚取って出すと
影へと放って投げる
途中、札は発火を始め、瞬間影が消える
地に落ちていくくるみの身体を抱きとめてやり、その身を横たえ柔らかな草の上へ
一体、この少女に何が起こっているのか
千切れ、痛々しい傷となってしまった中指を眺めながら、李桂もその場へと腰を降ろしていた
「段々、指切り様の支配が強くなってきてる。もう、手遅れなのかもしれない」
背後からのゆうりの声
唐突すぎる登場に、だが最早驚く事もせず首だけをそちらへと巡らせる
「……随分と他人事みてぇな物言いだな。テメェの妹なんだろ?」
「そうだよ。一番大切な僕の妹。だから醜く変わっていくアイツを見るのは耐えられない」
笑っているのか泣いているのか解らない顔で、ゆうりはくるみを抱いてやりながら
指塚を睨めつけていた
「こんな物、なければ良かったのに」
小さく呟き、くるみと共に姿を消した
その跡に何かが落ちている事に李桂は気付き、拾い上げてみれば
それは、千切られた少女の中の指
まだ微かに動き、痙攣を起こしている
見るにソレは酷く不愉快で堪らず
派手に舌を打つと地面へと投げ付け踏みつけていた
状況は、理解する処か益々解らなくなっていく一方で
理解する事の出来ない己に腹ばかりが立つ
しかし、この場に座り込んだままで居ても仕方がない、と
取り敢えず、帰宅の途についたのだった……

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