《MUMEI》
無茶なわがまま
「それでも、もし蝶子を出すっていうなら、俺は出ないからな!」


とうとう俊彦は、わけのわからないわがままを言い始めた。


「店長の権限で、和馬も雅彦も孝太もダメだからな!」


「俊彦!」


私は我慢できなくなって、俊彦を怒鳴った。


「私が商店街をネタにしたらって提案したのに、俊彦はそんなに反対なの!?」

「は、反対じゃないもん! 蝶子が出るのが嫌なんだもん! 俺だけの蝶子でいてほしいんだもん!」


ハァ…


私は、深く大きくため息をついた。


「…とりあえず、蝶子ちゃんが来る前のネタを探せば?」


咲子さんの提案に、皆、一応納得した。


そして。


「やっぱり、これだよな」

孝太と麗子さんの過去を元にした話がいいのではという考えがまとまった。


しかし、麗子さんは、『クローバー』には来ていなかった。


麗子さんは、先日長男孝哉(たかや)君を出産したばかりで、まだ入院していたのだ。


「誰が麗子に許可を得るんだ?」


孝太の言葉に、皆…


「え?」


私を見つめた。


皆が考えた話は、美しい悲恋話だったのでプライドの高い麗子さんがそれを許すかは、私にかかっている…ようだった。

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