《MUMEI》
待つ
   〜歩視点〜


栄実は、ふと視線を下に落とした。


先程まで止まることなく流れていた涙も、自然に乾いていた。


「海、歩っち」


栄実が顔を上げ、俺たちの名前を呼ぶ。


「時間がかかるかもしれないけど、栄実考えるよ!

前に進むために、栄実に出来ること考える!


栄実にしか出来ないこと見つける!」


そして先程までの栄実とは打って変わって

強い瞳で必死に前に進もうとしている栄実がいた。


「だから・・・待ってて欲しい」


栄実はそう言った後、駄目かな?っと不安げに首を傾げた。


俺と海は顔を見合わし


「「駄目じゃない!!」」


っと同時に叫んだ。


そんな俺たちを見て、栄実はくすっと微笑んだ。そしてまた真剣な表情になり、話始める。


「1人で考えたいから、その間みんなには会わない」


栄実の真剣さに負け、俺たちは渋々頷いた。


それでも不服そうに見つめる俺たちに栄実は


「今週中には、必ず答えを出すから・・・それまで待って?」っとお願いしてきた。


俺たちは数秒間悩んだ末、分かったっと返事をした。


「栄実、お前は1人じゃないからな!」


俺は、栄実に満面の笑みを向ける。


「俺たちがついてるよ!もちろん麗羅チャンも」


海も、栄実から離れ栄実の頭をくしゃくしゃ撫でながら笑う。


「うん・・・ありがとう」


栄実も、涙を浮かべながらも笑顔になる。


俺たちは、玄関のドアを開け外に出る。


すると海が


「栄実にちょっと話があるから、歩先に出てて」っと言いドアを閉めた。


なっ仲間外れ・・・?


軽くショックを受けながら、俺は静かに玄関の前で海を待つことにした。

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