《MUMEI》
7#少年床夜の夢A(注・若干の性描写あり)
少年の聞いたことも無い甘い声に、草馬は少なからず動揺していた。

闇夜に浮かび上がる、ベッコウの美しい肢体が目に浮かぶようであった。
「クソッ…」

軒下に身を潜めてから、暫くは2人の楽しげな話声が聞こえていたのだが。
突如静まり返ると、情事が始まったのだ。


―――――落ち着け、俺は屋敷の為。警備しているにすぎないんだ。床の声に驚くほど子供ではないのだ。

自分に言い聞かせるように心の中で繰り返す。
ベッコウの嬌声が耳に届くたびに、草馬の心臓はドクンと波打つのであった。


「んはぁっ…ダ…ダメぇっ…」


――――ドクンッ。 落ち着け。落ち着け。ベッコウは仕事じゃないか!

「あぁん…そこぉ…」

――――ドクンッドクンッ。落ち着け。。ベッコウも大変な仕事なんだ。俺も子供じゃないんだ、それくらい分かる。

「あぁぁ!!もうダメぇ!佐々木さまぁぁあぁッッッ」

――――ドックンッ!なんで、俺じゃない奴に抱かれてるんだ!!!!


「ぇ…」
ベッコウの嬌声に押されるように、自分自身も気付かないうちに押し殺していた感情が爆発した。

――――俺、じゃない奴…何を言ってるんだ俺は。俺は、俺はベッコウを好きなのか…?



「んはぁ…はぁ、はぁ、、」
「ベッコウ…愛しているぞ」
「佐々木様ぁ…」
「ベッコウは私だけを、好いているのか?私以外に好いている奴はおるのか?」



――聞きたい!
突然の言葉に軒下で草馬は息を呑む。
数秒の沈黙が永遠にも思えた。自分の心臓の鼓動だけが異様に大きく聞こえる。
期待の鼓動なのか、不安の鼓動なのか、ベッコウの告白までのカウントダウンの様に高鳴る鼓動を聞きながら待ち構えた。


「好いている人?」
「そうだ、この佐々木以外におるのか?」
「……」
「…ベッコウ?」

「え…っと…僕のぉ…好きな人は…」



ドーーーーーーーーーン!!
大きな地響きと共に闇夜に爆発音が鳴り響く。

「何事だ??!」
「エッ??!!」

――――なんだ!!!???今の音は、

ドーーーン!
続けざまにまた爆発音が鳴り響く。

――――お屋敷主様の部屋の方からだ!

草馬は軒下から弾かれるように飛び出すと、お屋敷様の部屋に向かって中庭を走り抜けた。

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