《MUMEI》

“稜兄だ…。
きっと、気を失ってるのを良いことに稜兄が脱がしたんだ…。”


メラメラと怒りが込み上げてくる!!


『何するのよーっ!!』


私は、力一杯叫んだ…。


まだ体に熱がこもっているのだろう…。
叫んだら、またクラクラしてきた。


『何だよ!いきなり!!
うるせぇな…。
大声出すな!
また倒れるぞ…。』


『…クラクラ…する。
…何で私…裸なのよ(怒)!…変態…服持ってきて。』


『…うるせぇ。
服は今、洗濯中だよ…。
…医者が“着替えさせろ”って言うから…。
あと“出来るだけ涼しくしてやれ”って…。
…だから、俺が…。』


『…だからって何も裸にすることないじゃん!!』


『大丈夫!!
全部見たけど、触ってはない!!神に誓って…。
…我慢したから!!』


“全部見た…(怒)?”
“我慢した…(大怒)?”


“…こいつ〜!!”


『ふざけるな〜!!』


………………………


ご近所さんは地響きかと思ったかもしれない…。


私の声は、窓を開けていたこともあって響き渡った。


ガチャッ


玄関のドアが開く。


『何だよ?今の声…。
外まで丸聞こえだぞ!!』


“ヤバイッ!!
渉が帰ってきた…!!”


足音がゆっくりと、リビングに近づく…。


“…どうしよう?
こんな姿…
渉に見られたら…。”


『来ないで!!』


私は、思わず叫んだ。


渉の足音が、リビングの前で止まる…。


辺りを見回し、良いものを見つけた!!


“…これだ!!”


『ゴメン渉!!
入ってきていいよ…。』


ガチャッ


リビングに入ってきた渉は、目を丸くした…。


『…何やってたの?』


渉の質問も無理はない…。


私は、とっさに部屋に、脱ぎ捨ててあった稜兄の“サウナスーツ”を着たのだった…。


ソファーにはサウナスーツを着ている私…
その前には、気まずそうに後ろを向いている稜兄…。

異様な光景だった…。


『お前暑くないの…?』


渉の素朴な質問は続く…。


『…あはは。全然(汗)
私、ダイエット中だから稜兄にサウナスーツ借りたんだ…!!』


『ふ〜ん。…でアレは?』


渉の指差す方向には、稜兄が馬鹿丁寧に干したであろう…私の…


ブラジャーと…


パンツが…


風に、なびいていた…。


“キャーッッ!!”


顔から火が出そうだった…。


恐る恐る渉の顔を見る…。


うっ…視線が痛い…。

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