《MUMEI》

「いい恰好だね。素敵だよ千秋兄さん。」

千守が満面の笑みでやって来た。


「……帰れ」

「嫌だ、こんな兄さん滅多に見られないじゃないか。一緒に写真なんかどう?」

携帯をちらつかせている。



「怖いなあ、目殺だね?
そうだ、どうして珠緒持ってこなかったの?楽しみにしてたのに。」

そうだ、此処では幼女を持ってきたことになっている。


「あれにはまだ早い。」


「ふーん?
まあ、いいけどさ。

そうだ。この旧屋敷でついに幽霊が出たらしいよ。」

冗談で言ったのか続きを待ってしまった。


「下らない」


「そう?幽霊を従わすのって凄くない?
僕の理想としては2メーターくらいのツギハギモンスターなんだ。」

彼が語る理想は残念ながら化け物と言ってしまっている。


「千守が捕まえられるならとっくに俺がそうしているとは考えないか?」

千守のことはよく分かっている。


「……帰る。
兄さんの滑稽な姿も見れたし。」

千守は勢いよく立ち上がり去ってゆく。

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