《MUMEI》

気のせいだと思うが、引っ掻くような音が扉越しに響いた。

人間のような荒い息遣い。
この辺りに近付ける人間なんて限られている。

調べて徹底的に究明してやろう。
もし、幽霊なんて非科学的なものだったら札でもなんでもして睡眠を妨げた罪で一生飼い殺す……。


深夜、長い廊下に不自由な体を引きずりながら出る。

奥の影になった窓の真下に這う塊が見える。


「う……」

啜り泣く声がした。


「泣くなら、外で泣けぇ!」

眠気と麻痺した体で尋常でない苛立ちを覚える。
履いていたスリッパで回復しかけている肩を使い命中させた。


「 はぎゃっ ごめんなさい!」

聞き覚えがある、間の抜けた鳴き声……


    「タマ?」

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