《MUMEI》

「白戸が思うよりはアレは馬鹿だけど良い子よ!……馬鹿だけど!」

馬鹿な思い出ばかりが浮かび、フォローしきれない。


「……けなしてますね。」

「とにかく!ウチの子は良い子です!あ、あと絵が凄く表現豊か!」

やったよ世喜、馬鹿だけど、あんたには絵があるじゃない!


「……ッ。先輩素敵過ぎです……!」

白戸のツボに嵌まったらしい。

「過保護なのよ白戸は、
そうだ、本当は鬼久保君にずきゅーんなんでしょ?!」

白戸はぴたりと笑いを止めた。ふふふ、当たりだ。


「……俺は過保護なだけですよ?」

瞳に影を落とした気がするのに……

「そう?」




「……だって、俺、先輩にずきゅーんですから。」

白戸はするりとその綺麗な手で私の手を持ち上げると手首に接吻した。


「……べうほ?!」

自分でも理解不能な言語だった。

「〜〜〜〜ッ、先輩てば素敵過ぎですよね……」

白戸は笑いを堪える為に腹を押さえている。


「あんまり、ふざけてると怒るよ!」

白戸め、年下のくせによくも私を玩びおって……!



あんな破廉恥なことをする奴は絶対好きにならない!

だからこの鼓動もきっと怒涛の新事実に対して私の心臓が耐え兼ねたんだ!

きっと、そうだ……

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