《MUMEI》 サトルは電話を片手にドアを開ける。 誰かと話をしているようだ。 玄関に入るのに、サトルの肩にわざと軽く当たった。健気な威嚇とでもいうか、意地というか、我ながら大人げのなさに少し自虐感を覚えた… 電話中のサトルは、ゼスチャーで私に座れと指示を出している。 ヒュー!ヒュー! ヤカンが湯気を吹きはじめた。 (のんきにお湯なんか沸かしてさ!) イラッときた。 「ほんじゃ…!また! おやすみ。」 (やっと切ったな) サトルは無言でカップを2つ並べ、半分笑い、半分オドオドしたような表情で私を見た。 「コーヒーがいい?紅茶にする?」 「どっちでも……」 なんでもなかったかのように振る舞うサトルを見ていると、冷たい返事しか返せやしない。 白い絨毯に正座していた私は切り出した…… 前へ |次へ |
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