《MUMEI》
薬指
いつからか、
彼が居なくなってしまったことに慣れた。


私にはもう子供も居る。
母親に成った。


ただ、指輪はサイズが合わなくなったと言って嵌めれない。


資格が無いから。






代わりに、
美しい薬指に嵌めている。

私なんかより遥かに美しい薬指。


血の通っているのに
無機的で、
私の指輪に
ぴったりと納まり、
銀の煌きを引き立たせる
その薬指は、
まるで
一つの彫刻のようだ。


その
薬指は
私の化粧台の引き出しに入っている小筺の中に仕舞って在る。

靜かに息をひそめている。





私の秘密の筺。

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