《MUMEI》

「なんだよ〜…慌てて来たのに…」




日高と駅の改札口の前で待ち合わせしていた。


携帯をポケットから出して確認すると、約束の時間からもうすでに20分過ぎてしまっている。


「は〜…もう…」



壁に寄りかかり躰をゆっくりと休める。




まだ貢に抱きしめられていたかった気持ち、頑張って振りきって走って来たのに…。






「ごめ〜ん!佐伯」
「おせえよもう!」



「ご免!なんか髪型決まんなくてさ〜!じゃあ行くか!」




更に10分遅れで登場した日高。




………いつもと変わらない、ちょっと寝癖くさいつまらない髪型。



「――もう、行くぞ?」
「な〜俺の服装大丈夫?」
「う〜ん…多分な〜」



ジーンズにブランドでもなんでもない、地味なシャツな服装にどうかと求められても…





日高に誘導され入った事の無いカラオケボックスに着き、日高がメールを打ち終えるとすぐに、カウンター前に日高の兄貴が現れた。





「お前らおせ〜よ!なにしてたんだよ!」
「ごめん兄貴、佐伯がもたついてたから」
「は?な、日高?」



日高の兄貴、拓也さんは俺を一瞬睨んだ…が…



「――君が佐伯君?」



「は、はい、はじめまして…」



何度も日高宅にお邪魔しているが何故だか会ったことがなかった。




拓也さんは俺を上から下まで見た後、何故か突然顔が赤くなった。




「お、女の子待ってるから行くぞ」

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