《MUMEI》

こうして…
私、橘 璃久は…
坂城家のお手伝いさんを
クビになった…。


めでたし…めでたし…


………………………


ってなるかーいっ(怒)!


私には借金があるの!
なんとしても100万円稼がなきゃ!!
“クビにします!”
“はい。分かりました。”
ってわけには、いかないんだからね!!


次の日、私は校門の前で渉を待ち伏せた。


“来た!!”


『渉!…話があるの。』


私の声は明らかに聞こえているのに、気付かないフリをしてシカトされた…。


“もう(怒)!!
話くらい聞いてくれたっていいじゃん!!”


昼休みの屋上…


やっぱりいない…。


私は、完全に渉に避けられていた…。


“よしっ!今度こそ。”


私は放課後、校門の傍の茂みに身を隠す…。


“渉が出てきた。
………………今だ!!”


『捕まえた!!』


私は一気に走り込み、渉の腕を掴んだ!!


『…なっなんだよ?』


驚いた渉は、逃げるタイミングを逃していた。


『私が軽率だった!
謝るから…これからはちゃんとするから、クビにしないで!!』


大声で叫ぶ私に圧倒されている渉…。


『…とにかく腕を放せ。』


『ヤだ!…いいって言ってくれるまで放さない。』


私も必死だった…。


『…分かったよ。』


渉は渋々言った…。


『…本当?』


『…あぁ。
俺も昨日は言い過ぎた。
稜兄から色々聞いて…
イラついてたんだ…。
璃久がこのまま家にいれば、稜兄と…
…何つうか…その…あれだよ…変な関係になっちまうんしゃないかって。』


渉は、俯きながら恥ずかしそうに言った…。


『…変な関係?』


ポカンとした私に渉は、言い切った!!


『バイトを続けることは許す!!だけど稜兄と二人きりになるのは禁止だ!
気を付けろよお前、
そんなんだとこの先、
稜兄にヤラれるぞ!』


やっと意味を理解した私が笑い飛ばす。


『あははっ。ないない!
たしかに稜兄は変態だけど、無理やり襲ったりしてこないよ!!』


その時…
後ろから声がした。


『俺、襲うよ!!』


“…稜兄!?”


私と渉は驚いた…。


『どうして
…稜兄が学校に!?』


『あ〜今朝、
渉から“璃久がバイト辞めた”って聞いたから、説得しに来たんだけど…もうその必要なさそうだな!!
俺、先に帰るわ。』


そそくさと帰ろうとした稜兄に、渉が叫んだ!!


『稜兄!!
さっきの本気かよ!?』


『…あっ?
あぁ〜さっきのって“俺が璃久を襲う”ってやつ?
本気だよ(笑)!!
俺は、チャンスがあれば璃久とヤる気満々だ!!』


おどけて笑う稜兄…。


『まぁ〜せいぜい、璃久も俺と二人っきりにならないように気を付けろよな。』


『ちょっと待てって!!』


また渉が稜兄に叫んだ。


学校の校門で、アイドル的存在の渉が叫ぶ…


瞬く間に、生徒が集まってきてしまった…。

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