《MUMEI》

結局、勇気が無くて聞き取れなかった俺は非常に後悔した。


帰り道、七生と歩いていると、調度歩いている方面に黒い外車が止まっていた。

その横ではこちらへ手を振る黒髪の艶やかな美女……


「七生さんっ……」

美女は七生の名前を呼びながら笑顔で迎えてくれた。

「あれ、瞳子さんどうしたの?」

七生の口に出した名前は紛れも無い、メッセージカードの人だ。


「……七生、どちら様?」

落ち着け俺……!


「私、コンクールで拝見させて頂いた時から七生さんのファンなんです。」

こんな美女が七生のファン……?!
拝見させてイタダイタ……?!


「んーと、瞳子さんは友達、二郎は家族。つまり二人も友達ということだ。」

七生、相変わらず自己中心振りを炸裂している。
瞳子さんの七生に向けるそれは明らかに友達を超えたものだ……!

「まあ、七生さんは貴方のお話をして下さってます。お会い出来て光栄です。」

握手を求められた。

「……はあ。」

瞳子さんは小さくて、ぴかぴかの爪をお持ちになっている。
笑顔になると片笑窪が魅力的な女性だ。
若干、この展開においてけぼりになっている。


「素敵な方ですね。仲良くして下さいね。」

オーラが違う……!

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