《MUMEI》 約束の時間コンコンッ! 「…はい?」 「田中さん、開けて下さい」 俺は、大人しく鍵を開けた。 「すみません、こんな時間に」 「いえ…見回りとか、ですか?」 俺は、看護婦に質問した。 時刻は、午前0時。 思い出に浸る九月三十日は終わり、十月一日になっていた。 「それも、あるけど。…保護者の方が、連絡が欲しいって、おっしゃって」 看護婦は、俺の携帯電話を手に持っていた。 「今から、ですか?」 「…えぇ」 そして、俺は看護婦に、携帯利用可能な場所を教えてもらった。 おれは、パジャマの上に上着をはおってから言われた場所 病院入口付近に向かった。 《…気持ちは切り替えているだろうな》 ワンコールで出た忍は、いつも通りのクールな口調だった。 「あぁ」 一日 たった一日だったが 俺の心は 旦那様で満たされていた。 《なら、いい》 「今日、来るのか?」 《朝、こっちを出る》 「そうか、じゃあ、俺は寝るから」 《あぁ》 さすがに忍は、普通は見つかったのかと質問せずに、通話を終了させた。 前へ |次へ |
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