《MUMEI》 少しずつ… 流れは赤高に来ていた。 「行け!!」 「ナイッシュー!!」 猪狩のシュートが決まる。 「ブーッ!!」 前半終了のブザーが鳴る。 スコアは17対16。 1点差まで詰めていた。 「行けるぞ!!」 「おぅ!!」 追い上げる形で前半の終わった赤高。 後半の追い上げに期待が高まり、 ベンチは盛り上がっていた。 「猪狩。」 「なんすか?」 「あんまり勝手なプレーをするな。」 「は!?」 「先生?」 「ユキヒロ、黙って聞け。」 「俺があいつを抑えたからここまで追い上げられたんだろうが!!」 「あんな指示は出してない。」 「結果的に抑えたんだ!! 俺よりあんたの方が上ってことだろ。」 「作戦は俺が出すんだ。 ちゃんと意図も説明したはずだ。」 「そのディフェンスで4点差もついたんだろ!!」 「今は奇襲になって点差を詰めれたが、後半お前の穴をエース45に付かれるのは痛い。 お前が中を固めなきゃならないんだ。」 「あんなヤツよりもセンターの方が厄介だったから抑えただけだ!!」 「キーパーのことも考えろ!! ロングを打ってくるセンターと、 突破してくる45。 どっちを抑えるべきか少し考えればわかるだろ!!」 「うるせぇ!!」 その一言に、 ベンチは一気に静まり返った。 「俺がこのチームで一番点取ってんだ!! このチームでだけじゃね〜!! 全チームを合わせても現段階では俺が一番点取ってるはずだ!! 俺が最強なんだ!! 俺のやることに口出してんじゃね〜!!」 「…」 監督西野は迷った。 こんな選手をこのまま試合に出していていいのだろうか? 猪狩は確かに上手い選手だ。 抜けるのは痛い。 3年生にとっては最後となるこの大会。 どうしても勝たせたかった。 正しい判断がわからなかった… 「…古田。」 「…あんだよ?」 前へ |次へ |
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