《MUMEI》

「後半のスタメンはお前が選べ。」


「は!?」


「俺には猪狩を入れるべきかどうかわからん。


…お前が猪狩に入って欲しいかどうか。


それで決めたっていい。


3年生にとって最後の大会だ。


お前の好きな判断をしていい。」


「…」


(なんだよそれ…


それは結局投げ出したってことじゃね〜のか?


お前の好きな判断をしていい?


ふざけんなよ…


俺たちにとって最後の大会…


だからこそお前が指示出すべきじゃね〜のかよ…)


翔太は怒りを覚えたが、


口には出さなかった。


(いいさ…


大人が自分勝手なのは知ってる…


けどな、


俺は違う…


お前なんかとは違う…


俺は投げ出さね〜。


マジに…


マジに勝ちたいからな。)


「猪狩。」


「はい。」


「…スタートは前半と一緒だ。」


「はい。」


猪狩の行動は自分勝手な物だったが、


『勝ち』に執着しているからの行動。


そう思った翔太は、


変わらず猪狩をスタメンに入れた。


「…」


残りのハーフタイム、


それ以上誰も何も口にしようとはしなかった。


(最悪の空気だ…)

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