《MUMEI》

(生徒達)
『ちょっと何?』

『あれ…
坂城くんじゃない?』

『隣にいるのは橘 璃久よね?』

『何もめてんの?』

『あの坂城が怒鳴ったよ…。』


ざわざわ………。


“…これってヤバイかも”


きっとまた、変な噂を流されちゃうよ…。


なんて思っていた時…
野次馬の1人の言葉が、私に突き刺さった…。


(生徒)
『やっぱり…
坂城くんと橘 璃久って付き合ってたんだね…。
あんな子と付き合うなんて坂城くんの事、軽蔑しちゃうな…。
なんかガッカリした…。』


“……………!?”


“この渉を軽蔑!?
…私のせいで、渉まで嫌われちゃうなんて……。
………そんなのダメ!!”


『…ちょっと!!
何、勝手な事言ってんの?私が坂城くんと付き合ってる!?そんなわけないじゃん…。』


私は、さっきの生徒に向かって言った。
すると、その生徒が言い返してきた。


『嘘だ〜。
この前、屋上で二人を見かけたし今日の朝だって、あんた坂城くんのこと待ち伏せしてたじゃん!!
付き合ってるんでしょ?
じゃなきゃ、二人で何話してんのよ…。』


“…う゛………。”


その場にいた全生徒が、私に注目した…。


『…つっ
…付き合ってなんてないってば。…何の話って言われても…色々よ。』


私の、たどたどしい話し振りは益々怪しかった…。
生徒の誰一人納得していない様子に焦った私は、思わず“大変な嘘”をついてしまうことに…。


“………そうだ!”


『私の彼はこの人!!』


私は、稜兄を指差した。


『…私、坂城くんのお兄さんと付き合ってるの!
だから、坂城くんには色々相談に乗ってもらってて…。ねっ!?稜っ!!』


私の必死な眼差しに、稜兄は驚きつつ、話を合わせてくれた!!


『…お〜そうそう。
俺の彼女!!皆さん。
“弟”の渉と“彼女”の璃久を宜しく!!』


一瞬、辺りは静まり返った…。


…が、見た目がチャラい稜兄と男遊びで有名な私は、お似合いに見えたのだろう…。みんな一斉に納得しだした…。


『やっぱりねっ!
私は、坂城くんと橘さんじゃ釣り合わないって最初から思っていたのよ!!』


さっきまで、どんなに言っても、付き合っていると疑ってかかっていた生徒達が、あっけなく帰って行った…。


“ふぅ……。
これで何とか、渉に迷惑かけないで済みそう…。”


『…良かった。』


私が呟くと、渉が不機嫌そうに睨み付けた…。


『…何が
良かったんだよ。』


すると、稜兄が近づいてきた。


『おいっ!渉!
俺の“彼女”を睨むのは止めてもらおうか(笑)!』


『…稜兄。もうみんないなくなったから、彼氏のフリはもういいよ…。
さっきはありがとう。』


私がお礼を言うと、稜兄がニタっと笑う。


『彼氏のフリじゃねぇよ。今さっきお前の彼氏になったんだ!!
俺、彼女は作らない主義だったんだけど、あんな大勢の前で紹介されちゃ〜しょうがない!!
なってやるよ!
お前の“彼氏”に…!』


“はぁ〜(汗)。
また稜兄、訳分かんないこと言ってるよ…。”


『渉!そういう事だ。
俺と璃久は、付き合ってるんだから当然二人っきりにもなるし、あんな事や…こんな事も…やる!絶対!!
邪魔すんなよ(笑)!』


稜兄は、いたずらっ子のように満面の笑みで微笑んだ…。


稜兄の企みに私は、ただ呆然と立ちすくむしかなかった…。

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