《MUMEI》

椎名くんの家に帰ると、いい匂いがした。



「…ただいまー…」



家に上がると、



「あら、今帰ってきたの??
…すれ違いじゃない、タイミング悪いわ〜」



と、椎名ママが顔をしかめた。



「??…すれ違い、って…??」



訊ねると、



「ん??…ああ、今、蓬田さんが来てね、晩ごはん作ってってくれたのよ。
一緒に食べようって言ったんだけど、用事あるからって帰っちゃって―…」


「………!!」



椎名くん、わざわざ来てくれたの―…??



「それにしても、美味しそうな匂い〜」



ご機嫌な椎名ママ。


ご飯をよそって、用意されていたおかずを口に運ぶ。



―…私、勝手な理由で距離を取ったのに―…



「…あんたが作るのに、似てる」



椎名ママが、呟いた。

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