《MUMEI》 「昭一郎、久しぶりねえ。」 萌と会ったのは昭一郎とやっと話せるようになったくらいの時だ。 彼女は純朴で素直な少女のような女性だった。 「私、今この辺りで働いているのよ。 昭一郎は大学生だものね。――――国雄は、こっち来るの?」 昭一郎を知るには萌が必要だと、計算してしていた。 いつの間にか、社長とその娘の愛人で、萌の恋人で昭一郎に片想いという図が生まれていた。 そして 昭一郎には国雄という影が支配している。 俺は、知っている。 彼が抱く時、見せる瞳。 潤んだ、全てを押し殺したような瞳…… 初めて、国雄を見て直感したんだ。 お前だ …………と。 前へ |次へ |
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