《MUMEI》

「愉しそうな話だな?」

うわ、キタヨ……。


「氷室様!」

今の明石君は尻尾が付いていたら確実に振り乱している。
さっさと扉を開けて御主人様へ駆け寄って行く。


「ウチのペットを無断で持っていくな、また、罰せられたいのか?」

その、抑揚の無い声を聞くと思い出す……。

「俺はもう千秋とは関係ないから、千秋じゃこの子は育てられません!家が引き取らせていただきます!
ちゃんと教育を受けさせれば真っ当な人間になれるんだ!」



「や、止めてぇ、二人共僕の為に争わないでぇ仲良くしてえ!」

……この子はまた何か新しい想像力を働かせちゃって……俺が面倒見なければ。


「螢相変わらず虫ケラみたいな綺麗事を並び立てるな、俺はお前達二人を調教するくらい訳無いからな?」

こいつこそ、相変わらず背中に鞭を隠し持っているようだ。

指先がひくひく動く様子を見ながらいつ、こちらに攻撃されるか様子を窺う。


「……ふ、だからお前は甘いんだ!」

手はフェイントで、千秋の足が明石君の腹部を蹴る。
吹っ飛んだ明石君は便座の洗浄スイッチを押したらしく、俺は一身に温水を浴びた。


「ははは、虫ケラでも少しは見られるようになったじゃないか?千花じゃ満足しないだろう。」

背中に止めど無く水が降りかかる。
雫となりそれは背筋を伝い、足首に垂れた。




「……お前ら纏めて俺が叩き直してやるーーーー!!」

なにか、俺の中で燃え上がるものがあった。

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