《MUMEI》
違和感
午前中の検査を終え、病室に戻ると忍が待っていた。

「遅れてすまなかったな。体調は大丈夫か?」

「………一応、大丈夫、だと思います」


(びっくりしたぁ〜!、そうだよな、ここ、病院だもんな!)


いくら個室でも、防音ではないから、誰が外で聞いているかわからない。


忍はそれを警戒して、俺を心配する演技をしているのだと


「どうした? 食事が来てるから、座って食べなさい」
「…はい」


わかっていても、俺はものすごく違和感を感じていた。


(違和感と言えば…)


椅子に座りながら、俺は忍をチラリと見た。


今日の忍は、微妙に髪型が乱れ、Tシャツ・ジーパン・スニーカーという珍しい格好だった。


心配してかけつけた保護者を演出しての風貌だろうが、普段、決して乱れない忍の髪が乱れているので、俺はかなり違和感を感じていた。


「随分、変わった食事だな」


忍がそう言うように、お盆の上にあったのは、元は何かわからないミキサーにかけられたおかずと、かなり水分の多いお粥、それに…

唯一の固形物のゼリーだった。


(今日の忍ほどじゃないけどな)


俺は、忍の言葉に頷きつつも、そう思っていた。

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