《MUMEI》
問題
「つまり…麗子さんは本音をなかなか言えないって…事、ですか?」


洋子さんの言葉に孝太は頷いた。


「だから、セリフはそのままでも、本音がわかる工夫しないと、本当の麗子さんの魅力が出ないと思います」


私は、感じていた違和感について説明した。


「本音がわかる、…工夫…」


全員が、無言になり頭を抱えた。


その時、旅行から工藤一家が帰ってきた。


「やこちゃん、どうしたんですか?」


やこちゃんの顔は青ざめていた。


「ただの車酔いよ。車の中で漫画なんか読んでるから、そうなったの」


咲子さんが呆れながら説明した。


「だってぇ〜!続き気になってたんだもん!」


やこちゃんは、今日発売だという少女漫画の単行本を握りしめていた。


「あ、それ面白いわよね。セリフと、心の声が反対で」

「でしょ?」


愛理さんの同意が得られて、やこちゃんは嬉しそうだった。


(漫画は、違いがわかりやすいわよね…それに、アニメも…)


最近壱子がハマっているアニメも、心の声がわかりやすかった。


キャラの口が閉じている時に聞こえる声が、心の声だったから。


「蝶子、何かアイデア浮かんだの?」

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