《MUMEI》 「そうだ、慶一は休暇は取ったのか?」 「は……はい、あの僕……」 兼松に声を掛けられ薇の切れたからくり人形のように慶一はぎこちなく話す。 「影近家の次男さんの婚約披露の為の夜会ですよね。確か、午前中とは別に砕けたものだと……」 春三は慶一と兼松の間を取り持つ。 「あ、あの御祖父様、どうしても僕一人じゃないと行けませんか。」 慶一はやっとで聲を振り絞る。 「慶一は連れる友人が居ないのだろう。」 兼松はちらりと林太郎を見た。 「分かりました、従兄弟である自分が御同行させて頂きましょう。」 林太郎は兼松の意向を読み取り挙手する。 唯一、慶一が顔を綻ばせていたことが林太郎の救いだった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |