《MUMEI》 くるみの背を宥める様に叩きながら言ってやれば その眼が李桂へと向いて、可愛らしい笑みが浮かべられた 「お約束、破ったままだね、キミは。指斬り様の言う事聞くってお約束、守らなかった」 「当然だろ、俺はそんな約束した覚えねぇぞ」 「そう、だね。だからキミの指は斬れなかった。指斬り様でさえも」 砕けた指塚を見、くるみは微かに涙を浮かべる 今更に恐怖心が現れたのか、大粒の涙を流し、止まらなくなっていた 「指斬り様は、可哀想。でもくるみは、くるみは……」 指斬り様への同情の念か 益々涙を流しながらゆうりへとしがみ付いて そんなくるみを、ゆうりは抱いてやり、あやすかの様にやはり背を撫でてやるばかりだ 「……くるみ、帰ろう。母さん、待ってるから」 もう気に病む必要はないのだと、行ってやりながら 二人の姿は竹林の奥へと消えていった これから先、あの親子が一体どう生きていくのか ソレを知る術は李桂にはなく だが出来る事なら平穏に日々を送って行ってほしい、と 柄にもなくそう願うばかりだった…… 前へ |次へ |
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