《MUMEI》

 「片が付きましたか。李桂、お疲れ様です」
竹林を後にした李桂
その姿は自宅ではなく何故か雪月邸にあった
一応は全てに片が付いた事を伝えてやると、雪月の表情も安堵のソレで
漸く李桂も肩を撫で下す事が出来た
「まとめて五年分は動いた気分だな」
そう言って笑ってやれば雪月も穏やかに笑い
だが途中に李桂の薬指の傷を見つけ、雪乃へ薬を持ってくるよう頼んでいた
これ位舐めておけば治ると言い張る李桂へ
雪月は聞く耳を持たず、手当しろと薬草を擂って潰し李桂の傷口へと押しあてる
物腰とは相反し、随分と手荒なソレに傷口が痛み、流石の李桂も半ば涙目だ
「それ程に痛む位、深く斬れていると言う事です。あともう少し深く斬られていたら、指を失くしていたでしょうね」
痛がる李桂を余所に雪月は淡々と手当を続け
そして終わる間際
「そう言えば、朝方に華月がうちに来ましたよ」
「華月が?」
「ええ。別に何をしにきたという訳でもなく、唯あなたへの愚痴を言いたい放題言って帰って行きました」
「……あの馬鹿、何やってんだよ」
「あなたの事が心配だったのでしょう。あなたの家に取り敢えずは居るからと、伝言を預かってます」
早く帰ってやれ、と急かされ
李桂は仕方なく帰路へ
外へと出れば既に日は暮れ、辺りは薄闇に染まっていた
随分と長い間、竹林に居たのだろう、時間の感覚が全く狂ってしまっている
「華月、居んのか?」
帰宅した李桂が、本堂から僅かに漏れてくる蝋燭の光に戸を開けば
散らかしたままの書物に、まるで埋もれる様に眠り込んでいる華月の姿があった
起きていれば、何かしら小言を言われた事だろう
僅かに肩を撫で下し、李桂は壁に背を預け座り込む
腰を降ろすと途端に一日分の疲労が眠気として現れ
李桂を眠りへと誘っていった
身体的にも精神的にも疲れきっている今は、素直にその誘いに乗ってやろうと
李桂は座ったままの姿勢で、ゆっくりと眠りへついたのだった……

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