《MUMEI》
引き渡し
洋子さんは、悩みに悩んだ末に、俊彦に直接指導を頼みに来たのだった。


「二泊三日だけでいいんです! 俊彦さんには学校の合宿所で男子生徒と過ごしてもらいますから」

「悪いけど…俺達これから蝶子の実家へ…って、何してる!壱子!」


壱子は俊彦の持っているバックのファスナーを開けていた。


「壱子?」


私が首を傾げていると、壱子はバックから、自分と弟達の荷物を取り出した。


「ママ、ちょっとごめんね」


そして、壱子は私のバックに強引に自分達の荷物を詰め込んだ。


「…何のつもりだ?」

「こういうつもり」×3


子供達は、俊彦を後ろから洋子さんの方へ、力いっぱい押した。


「行ってらっしゃい」×3

そして、私の足にしがみついて、俊彦に手を振った。

「パパ、借りていいの?」

洋子さんが確認すると、子供達は同時に頷いた。


「ママ、ようこさん、困ってるんだし、…いいでしょ?」

(う…)


子供達は潤んだ瞳で私を見上げた。


「困ってる人はたすけなきゃ、だめ、…でしょ?」

「そ、れはそうだけど…」

そして、私は結局、俊彦を洋子さんに引き渡す事にした。

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